長距離ランナーは、真面目で精神的な忍耐力があるように思われがちです。
毎日走っていると言うと、
「意志が強いですね」とか「辛抱強いのですね」と感心されることもよくあるでしょう。
そんな長距離ランナーの意外な側面が、2020年3月に発表されたばかりの学術論文で明らかになりました。
ウルトラランナーと一般人を心理学的アプローチで比較すると、ウルトラランナーの方がはるかに楽天的な性格で、しかも精神的な立ち直りが早い傾向があるということです。
ウルトラランナーとは、フルマラソン(42.195キロ)以上の超長距離レースを走る人たちのこと。
1日に、あるいは数日間に渡って、50キロや100キロなど尋常ではない距離を走り続けます。そのためには頑丈な肉体が備わっているのはもちろんのこと、心理学的にも特徴的なメンタルがあるのではないか?
この研究は、そんな疑問に答えようとしたものです。
1.調査方法について
オーストラリアにあるモナシュ大学の研究者たちは、20人のウルトラランナーと20人の非ランナーを被験者として集めました。
年齢は18歳から70歳までの男女です。
それぞれのグループから年齢と性別によって被験者をマッチングし、155項目にもわたる感情や日常態度について質問・回答を比較しました。
たとえば「私は変化に対応できる」という質問について、「そう思う」「まったくそう思わない」など、1~25までの数値で回答するという内容です。
さらに感情をいかにコントロールしているかを調べるため、36の自然なイメージ(椅子やソファなど)と36のネガティブなイメージ(出血シーンなど)を見せます。
そのときの心拍数や皮膚反応などの身体的変化が観察されました。
2.結果はいかに?
回復力に関する質問において、ウルトラランナーたちは非ランナーたちと比べて顕著に高い回答を示し、ネガティブな感情に対してはポジティブな考えで修正する傾向があることも分かりました。
また、ネガティブなイメージを見せられたときの生体反応(心拍数や皮膚反応)の変化について、ウルトラランナーの方が非ランナーと比べて明確に少ない振れ幅に収まっていました。
一方、ウルトラランナーが非ランナーより明らかに低かった項目は、集団への帰属意識でした。
3.社交性は乏しい!?
長距離ランナーはあまり物事に動じず、落ち込んでも立ち直りが早い。
しかし社交性には乏しいという傾向があります(あくまで傾向ですので、あんまり気になさらず!笑)。
長距離ランナーの中には、「当たっているな〜」とうなずく人もいれば、逆に「まったく違う」と思う人もいるでしょう。
私もウルトラランナーまではいきませんが、トレーニングの一環で長距離のランニングを結構な頻度で行っています。
ですが、1人で延々と走っていても特に寂しい、つらいとは感じません。
辛抱強いというより、むしろ苦しさに鈍感なのではないかと思うこともあります。
長距離ランナーは精神的に回復力があるのか、そもそも感情的に落ち込まないのか。
その関係は明らかではありませんが、どうやら身体的に苦しいはずのレースに耐えるうえで「おトクな」性格の人が多いのかもしれません。
長距離レースとは、走り出す前も走っている最中も、予期せぬトラブルや体調の変化に見舞われるものです。
それを心配しても仕方ありませんし、起きてしまったトラブルを気に病むようでは継続は難しいでしょう。
元女子マラソン選手の有森裕子さんや高橋尚子さんらを指導したことで知られるマラソン界の名伯楽、故・小出義雄監督の口癖は
「なんとかなるさ。心配するな」
だったそうです。
この思考こそが長距離ランナーに必要な素質ということなのかもしれませんね!
いかがだったでしょうか?
長距離のランニングを普段からされている方は、是非自分は当てはまるかどうか、思い返してみても面白いかもしれません。
ではまた次回!